たばこは、責任ある大人の嗜好品?

 厚生労働省は、生活習慣病対策の一環として、喫煙規制を強化するため、喫煙率に目標値を設定する方向で検討にはいった、とのことです(1/24 日本経済新聞42面)。現在の喫煙率は、男性46.8%、女性11.3%で、いずれも、上昇傾向があるそうです。
 一方、たばこは大人の嗜好品で、行政として一方的に数値目標を設定するのは問題であるとの意見もあるそうです。確かに、各個人の嗜好品に、お上があれこれいうのは、お門違いのようにも思えます。大人の嗜好品ですから、当然大人は、その結果に責任を持つはずですから。ん?その結果に責任を持つということは、もし、喫煙によって、喫煙と関係が明らかであるとされている疾患にかかったとき、大人であれば、自分の責任で、その治療をするということ?非喫煙者も入っている公的な健康保険は使わないってこと?うーん。そういう訳にも行かないか。難しいところですね。
 さて、海の向こうの、とある国では、たばこは、明らかな有害物質として認識され、公共の場での喫煙は法律で禁じられるのみならず、人前でたばこを吸おうものなら、その人物の人格は???と思われるような雰囲気であるそうです。喫煙は、嗜好ではなく、病的な状態であると認識されつつあるとのことです。
 一方、我が国では、この春から、禁煙支援に保険が適用されるようになるそうです。
たばこは大人の嗜好品、という意見を尊重するとすれば、嗜好品をやめるか否か、に公的な健康保険を適用させるのは、とんでもない、ということになりはしないでしょうか?ましてや、嗜好品を愛用した挙げ句に、肺がんや気道の疾患、その他諸々の疾患になったとして、その治療に公的な健康保険を適用させるのは、論理的に、というより、倫理的に無理があるのではないか、という意見が、このところ沸き起こっているようです。
喫煙は緩慢な自殺、という言葉を聞いたことがあります。生命保険会社は、自殺願望者に保険を掛けさせるでしょうか?
 我が国の健康保険制度は崩壊寸前という噂。どうにかして、疾患を減らしたい。ならば、喫煙率を下げよう。うーん。お役所が当然考えるシナリオです。禁煙支援に保険を適用させるのは倫理的に問題があるが、疾患を減らそうとすれば、やむをえない。背に腹は代えられない?
 西欧先進国では、喫煙は、いまや単なる嗜好品としてではなく、疾患として認識されつつあるそうです。