靴下に思う

 どうもこの靴下は、具合が悪い。
歩いていない時は問題ないんだけど、歩いていると、少しずつずれて、ずれ下がってくる。この前履いたときからだ。今日、違う靴をはいていてもずり下がってくるので、靴の問題ではなさそうだ。ある程度歩いたら、ズリ下がった靴下を挙げる。また歩いて挙げる、この繰り返し。右は問題ないのに、左だけ。
 歩く度に下がってくるのがわかる。気になってしょうがない。家に帰るまでには時間がある。どうしよう。
 ん?ふとみると輪ゴムが落ちている。犬も歩けば棒に当たる。人も歩けばゴムを拾う。というわけで、ゴムでとめてみた。うーん。心持ちよくなったか。でもやっぱりこのゴムでは力が弱いようだ。もう一個、もっと強力なのが落ちていないか、下を見て歩く。なかなか見つからない。ただの輪ゴムをこれほど熱望したことはない。それほど情けない状況になってきた。
 靴下がズレずにきちんと止まっている。このあたりまえのことが、なんて偉大なことなんだろう、と思った。