中古カメラ

 私はカメラが好きである。写すのも好きだが、お店に行って、眺めるのも好きである。これいいなあ、あれもいいなあ、と思いながら眺めるのである。別に買う予定はない。
 特に、中古を眺めるのが好きである。何か掘り出し物がないか、前々から欲しかった、けど、値段の折り合いがつかず結局買ってないものが、意外な低価格で出てないかどうか、覗いてみるのである。意外な低価格、ってのは、まずない。でも、新品だったらたぶん買わないだろうが、なぜか、中古で出ていたら、思わず買ってしまいそうなのである。
 以前、といっても、二十年くらい前だが、広島市内に通っていた時は、えんこう橋〜的場近辺にカメラの中古屋さんが幾つかあって、ショーウインドウを覗くのが楽しみであった。来る日も来る日も、覗いてみたのである。駅前に預けていた自転車で通学、通勤していたのだが、その機動性を生かし、しばしば、ちょっと寄ってみたのである。かつてのメイン機種、オリンパスOM4-Ti、そして、マクロ90mmF2は、こうやって手に入れたのである。新品では、とても手が届かなかったのである。中古が出ないか、出ないか、長いこと期待して、覗いていたのである。ある日、願いは天に通じ、ショーウインドウの奥に鎮座していたのである。これ頂戴、思わず言ってしまったものだ。
 今日、近くのカメラ屋さんに寄ってみた。この店には中古コーナーがある。お目当てがあったわけではないが、ちょっと寄ってみたのである。ニコンの古い広角レンズが出ていたら嬉しかったけど、出てなかった。
 でも、一つびっくりしたものがある。マニュアルフォーカスの、古いペンタックスの100mmマクロレンズが、88000円であった。かつての名機、ペンタックスLXの時代のものだと思う。うそ?ゼロが一個多い?かつての定価より高い設定である。おすすめ、と表示してあった。うーん、わからん。特殊なレンズなのかな。でも、これが本当であれば、嬉しい。なぜなら、100mmマクロは持ってないが、同じシリーズの50mmマクロを持っている。これが高く売れるかもしれないぞ。今使ってないから、売っちゃうのもいいかも。この値段が本当なら。帰って、さっそくインターネットで調べてみよう、と思ったのである。でも、たぶん、桁を間違っているんだろうなあ。
 そうそう、今や電脳、インターネットの時代。検索すれば、欲しいカメラ、レンズの中古が出品されてないかどうか、簡単に調べられるのである。でも、これは面白くないのだ。
 毎日毎日、古びたショーウインドウを覗くのが、面白いのである。掘り出しものがないか、変わったものがないか、来る日も来る日も、覗いてみるのである。