金の窓のある家

 働き者だが貧しいある少年は、毎朝、ある家を眺めていた。遥か向こうの山腹にある金の窓を持つ家。それは朝日にきらきらと輝いている。いったいどんな豪邸で、どんな人が住んでいるのだろう。毎朝、眺めていた。
ある日、とうとう少年は仕事を休み、かねてからの羨望の家を見に行くことにした。
 長い道のり。夕方やっと、その家にたどり着いた。でも、そこに建っていたのは、少年の家と同じくみすぼらしい家であった。ただ単に、朝日が窓ガラスに反射して、あたかも金の家であるかのように見えていただけ。
 そこに住む少女が言った。向こうの山に、金の窓のある家があります。いつも夕日に輝いて、きらきら輝いています。
 少女の指差したところ、そこには、たしかに金の窓のある家があった。夕日に輝き、美しい家。
それは、少年の家。

 例によって、朝、愛犬と散歩。
 向こうの丘に立っているマンションが、朝日に輝いて眩しかった。
 ふと小学生時代に読んだ話を思い浮かべた。たしか国語の教科書に掲載されていたのだったと思う。*1いまだに覚えているということは、子供心に感動したのかもしれない。当時その話の意味を理解していたかどうかはわかりませんが。

 金の窓のある家。幸せを求め、人々はさまよう。はるか遠くにあると思われたそれは、案外、自分の家なのかもしれません。 

*1:この話の題、作者などご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教えください。