二つの違い

最近、広島県であった二つの事件。
その1 高速道路で、バスが追突された。幸い大きなけが人は無かった。よかった。ただし問題があった。乗客に、受験生がいたのだ。このままでは試験にまにあいそうもない。そこで、警察がパトカーで、その受験生を試験会場まで送り届けた。
その2 土曜日早朝、ある地方都市の市長に電話があった。
住民票を今日発行して欲しい。今日中に受験の申し込みを送らないといけないから。
そこで、市長は担当者に、発行するように命令し、そして、発行された。土曜日は本来、その業務はお休みですけど。
 さて、警察も市役所も、住民に対しサービスを提供すべき立場にあります。受験生をパトカーで送った警察に対しては、比較的賞賛の声が多かったようです。融通の利かない(といわれている)警察が、粋な行動をとったものだ、という投書が新聞に載っていました。
一方、本来その業務がお休みの日に、市長命令で特別に仕事をしてもらった件に関しては、批判も出ているとのこと。
 どちらも、受験、という人生の大きな問題に関わっていますが、この二つの事件、人々の反応はいろいろ違うようです。バスの件は、いわゆる突発的な事故で、受験生本人には、まったく責任はありません。運悪く、巻き込まれてしまったのです。一方、住民票の件は、さて、これはどうでしょうか。住民票の発行を要求した市民に、なんの責任も無いのでしょうか?どうも、ここが評価の分かれ目になっているようです。万が一、また休みの日に住民票を出してくれ、と誰かが頼んだ場合、同じような対応をしていただけるのでしょうか?今日中に手続きをしないと行けない、今日中に書類をかかないといけない、と言われた場合、市長さんはどのように対応されるのか、興味のあるところです。住民票が必要になるということは、つまり何らかの手続き、書類を書かないといけないということ、おそらくそれには普通、期限があります。期限ギリギリまでほっといて、休日になって、さて、お休みのお役所に仕事をしてくれ、と言う人が続出した場合、どのように対応するのでしょうか?結局、休みの日もその業務を行おう、ということになってしまうのでしょうか。とすると、人件費が当然かかってきます。当然、それは、皆が納めた税金から、ということになるのでしょうか。まあ、今回限りということで、勘弁していただかないと。
でも、私がその市長さんの立場だったら、おそらく、同じような行動になったのではないか、とも思います。なかなか断れないでしょう。また、もし私が受験生で、うっかり書類を書き忘れ、気がついたのが、金曜の夜、だったとしたら、同じように翌朝お願いの電話をしていたかも?
ところで、我が国には、国民皆保険、というすばらしい制度があります。(破綻しつつあるとも言われておりますが。)これは、皆平等に、皆が公平に医療を受けられる。というのが一応の建前。本当にそうでしょうか?
ある会社に、同期入社のAさん、Bさんがいたとします。二人は仲良く仕事をし、出世もほぼ一緒、同じ給料をもらい、ほとんど同じような生活をしていたと仮定します。ただ、少し違うところがありました。Aさんは、お酒が好きで、タバコも手放せない。歯磨きなんかしたことも無く、口臭ぷんぷん。大の医者嫌いで、年に一度の会社が奨励する検診にも、行ったことはない。一方、Bさんは、お酒は少々。タバコは数年前に一大決心で止めました。食後三回、必ず歯磨きをし、年に一度の検診は当然のこと、3か月に一回は、歯医者に通い、歯石を取ってもらっています。さて、二人が納める健康保険料は、同じ。ところで、二人が使う医療費は、同じでしょうか?十数年後、肝臓をやられ、肺がんになり、歯槽膿漏で歯がなくなるのは、Aさん、Bさんどちらでしょうか?Aさん、Bさん掛け金は同じだけれども、給付される金額は違います。しかもどちらが給付金が多いか、ある程度予想されます。さて、これは保険といえるのでしょうか?公平でしょうか?
現在の健康保険制度は、健康に気を使っている人々から、そうでない人々へ、合法的に所得を移動させているのではないでしょうか?
 保険とは、突発的な出来事に対処するもの。例えば、乗っているバスに車が追突してしまった。
日頃から身体を悪くするであろうことを行い、予想通りになったときに、給付金をもらうのは、それって、保険?それは、例えば、期限がわかっている書類を書き忘れていて、お休みの日に自分だけ特別に仕事をしてもらうようなもの?