私はタンが好き

 いつもと同じ、夕食時。息子の問いかけに答えようとした。咬みながら、話そうとした。
痛っ。ベロ咬んだ。一瞬の痛み。これは結構痛い。しばらくして、血の味が。やっぱり痛い訳だ。でも、出血といってもわずかなので、心配いらない。そのうち治る。
 その二日後。またまた夕食時。話しながら食事していた。
痛っ。またベロ咬んだ。その一瞬の痛み。これは結構痛い。前回は左側を咬んだのだが、今回は、右側を咬んでしまった。
 焼き肉屋にいくと、必ずタンを頼むほどのベロ好きであるが、自分のベロは食べたくない。
 食事しながら、会話する。何気ない動作であるが、こんなことで、ベロを咬むなんて、もしかして、これは老化の始まりなのか?
 実は、何か月か前にも、べろを咬んだことがあった。その時も、あまり日をあけずに、二回続けて咬んでしまっていた。続けて咬むなんて、ドジなことだ。とその時は思っていたのだが、さて、今回も続けて咬んだ。これはなにか、法則のようなものがあるのではないだろうか?
 ベロを咬むなんてことは、そうそうはないことだし、しかも続けて咬むなんてことは、人生にそんなに頻繁におこることではなさそうだ。うーん、何かあるぞ。
 というわけで考えた。おそらく、いったんベロを咬むと、しばらくそこがじくじくして、どうも気になるのだ。特に食事中は気になる。ということで、ベロの動きが本来のスムーズな動きではなくなる。下顎の閉口の動きと、舌の動きの協調性が乱れてしまうのだろう。おまけに咀嚼中になにか会話しようとすると、ますます頭と顎の動きが複雑になり、そこに加齢という要素が加わってくると、ますます舌が障害を受けやすい状況になるのだろう。うーん、困った。今後もますます咬んでしまうかもしれない。なんてこった。いままで食べた牛や豚のタンの仕返しかもしれない。そんなにタンが好きなら、自分のタンも食ってみろ、といってるようだ。
 あれから三日はたっているんだけど、いまだ舌の側面に違和感が残っている。食事する時はできるだけしゃべらないようにしよう。沈黙は金なり。何回もベロ咬んでいると、そのうち、舌癌になるよ、と家内。ほんまかいな。